茄於留(カオル)は苛立っていた。別段不機嫌になる出来事には遭遇していない。しかし、どこかモヤモヤとしたものが胸の中で渦巻いている。茄於留はそれを振り払うかのごとく頭を掻きむしった。
だが、所詮は気休めで気分は一向に晴れずに悶々とした時間が過ぎていく。何故なのか原因が分からないだけに余計に苛立ちを呼び寄せる始末。
何となく気だるさを意識した茄於留は大きくため息をつき、何気なしに窓の外から見える景色を見る。窓から景色を見れば、気分は晴れなくとも心を無にすることができると思ったからだ。
熱弁を揮っている教師の講義など何処吹く風でただひたすらに窓から見える世界に目を凝らす。晴天だが、時折聞こえてくる咆哮と聞き間違おう風の音、大きく揺れている木々、そして小刻みに震える窓・・・風が強いのは明らかだった。