たしかに世界には平穏が訪れ、彼らの役目は終わった。人々は安堵に胸を撫で下ろし、喜びに胸は一杯になっただろう。
だが夜が来ると優しき明るい“陽光”が悲しみと凍てつき冷たい“闇”に食いつぶされるように、一つの終わりに始まりがある。
それから長き時を刻み、緩やかな変化を経て再び終わりと始まりの鐘は鳴らされる。そう“平和の終わりと動乱の始まり”を“告げる鐘”が……。
長き時を経て封じられていた石たちは、それぞれの塔に再び投げ入れられ力は解放された。湧き出ていた力が締まったために、世界は小さくなるという滅亡の序曲を奏でていたからだ。それを止めるべく再び石は投げられた、あるべき場所へ向かって…。
かくして幸か不幸か力は解放され、世界は縮小を止め滅亡への序曲は終わりを迎え、世界は再び元の平穏を取り戻したかのように見えた。それは恐らく塔の力を解放せんと立ち上がり、いくつもの試練を乗り越え無事成し遂げた勇敢な者たち全員が確信したであろう。現に世界は何事もなかったのごとく時の針を刻み始めた。
しかし忘れてはいけない。一つの終わりにはまた始まりが存在するということを忘れてはいけない。
それを頷けるかのように、人の闇は少しずつしかし着実に世界を蝕んでいく。周囲の糸と歯車を巻き込みながらも徐々に闇は広がっていく。
かつて不幸の事故で愛しき者を失った一人の学者は、失意のうちに一人娘を残して去っていった。愛しき者を失ったという現実に目をそむけながら去っていった。そして彼はことあるごとに自問し続けた。何故、どうしてこうなったのか?と…。
そもそも人は疑問を持ちそれを投げかける生物だ。何故こうなったのか、どうしてこんな風になってしまったのか、と……。彼もまたそうした無限の暗闇に囚われてしまっていた。
しかし、やがて彼は際限なく覆っている闇の中で『愛しき者が本当に願っていたことが何だったのか』を見出す事になる。それは娘から消えてしまった“笑顔”を取り戻すこと。それが彼のやるべきことであり、今は亡き愛しき者の願いでもあったからだ。
こうして彼は愛する娘のために少しずつ手を血に染め始めていく。世界を司る力『エナジー』を使いこなすことができる『エナジスト』、その素養がない物にエナジーストーンなるものを組み入れ強制的にエナジストの才能を開花させる研究など…。すべては娘に再び笑顔を取り戻して見せる…それだけを支えに彼は研究を重ねていった。その結末がどうなるかも知らずに…。
一方、置き去りにされた娘は父を追うために男装し学者を目指していた。男装をしたのは、子の世界では女性は学者になれないからである。学を積み知を上げ、そして名声を上げれば父が自分に気づいてくれるかもしれない、そう思ったからだ。
幼い頃、自分を撫でてくれた優しい父、そして大好きだった父、そして…自分から離れて二度と戻って来てくれなかった父、その父を探す。ただそれだけの純粋な想いだった。
そして彼女は自分と同じ能力を持つ『エナジスト』たちと出会い、様々な試練と葛藤を乗り越えてついに父がいる場所まで行き着く。
“父を止める”…その断固たる意思を持って彼女は父の元へたどり着いた。
そして二人の想いが交わったその先に待ち受けていたのは物悲しく、そして切ない結末。一時の交わりの中で見出した答え、その答えを示さぬまま運命という悲しみを帯びた真っ黒な糸によって二人の絆は引き裂かれてしまった。もう二度とどんなに手を伸ばしてもお互い手の届かないところまで二人は離れてしまったのだ。 これを悲劇と言わずして何と言うのだろうか。
それともこれも何かの終わりだろうか。あるいは何かの始まりか…。ただ一つ言えることは何かが終わったということ、そしてこれから何かが始まるということ。始めと終わりは表裏一体なのだから…。
終わりと始め…似て似ぬこの二つの事柄は生物に、いや森羅万象に課せられた十字架なのかもしれない―――。
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